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バイヤー・ホーリーのええ物語り

バイヤーの仕事を通して、たくさんの素晴らしいものとの出会いがあります。その商品の持つデザインの由来や素材への拘り、生産地の背景にあるストーリーを独自の視点で伝えていきます。

変形自在の曲がる器「すずがみ」

金属素材のひとつ、錫 (すず) 。

日常生活の中では触れ合う機会の比較的少ない素材であると思います。その錫の特性に着目し、ユニークなアイディアと融合し生まれた素敵な商品を紹介いたします。

まずは、錫という素材とはどんなものか?を少し掘り下げていきたいと思います。

遡ること奈良時代、日本では茶器と共にもたらされたという記録があり、正倉院の中にもこの「スズ」製の宝物が存在しています。酸化や腐食に強いことから、錆びない、朽ちない素材として、ながらく特権階級の人々だけが使うことのできる高級な飲食器の素材として重用されていました。そして時代は下り、江戸時代には町民の間でも酒器や煎茶道の器、さらには神社で使われる神具として使われるようになっていきます。海外でも古代エジプト時代から知られており、中世ヨーロッパではこのスズを使った食器は貴重な高級食器として使用され、教会のパイプオルガンのパイプもこのスズを主な原料とした合金で作られています。

 

こうした歴史的な背景を踏まえて、錫の素材の特性を少しまとめてみます。

①錫製の器はお酒や水を浄化します。そのため、酒気としてはお酒をまろやかで美味しく味わせ、また花器としては水を腐りにくくし切花などを長持ちさせるという利点があります。

②錫は金属のなかでも特殊な素材であり、黒ずんだり、錆びたりしない安定した素材です。有害物などが溶け出す心配もなく、安全性に優れています。

③熱伝導率が秀でています。そのため、「冷たいものは冷たく、温かいものは温かく」という特性があります。酒器としての実用性もさることながら、食器としてもお刺身やサラダなど新鮮な状態も保つことができるので美味しく食事が楽しめるのです。

上記のような特性を活かした酒器や花瓶などが多く見受けられますが、食器として生出された商品をセレクトし紹介いたします。

 

その商品は、「すずかみ」。

字のごとく、錫(すず)の紙(かみ)であります。

通常の錫の板と違い何回も圧延を繰り返し、さらに「金槌で叩く」ことにより、曲げ延ばしによる劣化が少なくなった、折り紙の様に簡単に折ったり曲げたり出来る商品です。熟練の職人がリズミカルに叩いた錫の板は、金属層が幾重にも重なり合って繊維状になり、折り曲げによる金属疲労の度合いが減っています。

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その「すずかみ」を好きな形にアレンジすることで、オリジナリティの溢れるテーブルウェアとしてお使いになれるのです。

大きさの異なる「すずかみ」を下記の写真のように使い分けれれば、一つは大皿として、もう一つは小皿として使い分けられます。 

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出典:http://www.syouryu.com/grape3/

 

このように、お蕎麦を冷えた状態で美味しく召し上がることも。 

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食器以外の用途としても、縁を大きく立ち上げて、唯一無二のあなた専用のインテリア小物としても。そして、お皿として使いたい場合は、「ころ」を使って平らに伸ばせば、一枚の紙状に戻るので安心です。しかも、収納するのにも場所を取らない優れ物であるのです。

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〇すずかみを伸ばすための「ころ」

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そしてすずかみには、以下の三種類の模様があります。お好みの柄を選ぶことで、長年愛着を持って使い続けていくこともできますね。

 

〇あられ

音をたてて降る氷の粒
その粒を打ち付けた様な、あられの鎚目

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さみだれ

陰暦五月に降る長雨
その雨跡が残った様な鎚目

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〇かざはな

雲の少ない晴れた日に舞う雪
その雪が積もった様な鎚目

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 実用性も兼ね備え、ユニーク溢れるアイテムであるので、新築祝いや結婚祝いなどのギフトにも喜ばれそうな一品です。

 

こちらの商品は、富山県高岡市で明治42年創業以来、寺院用のりんを専門に製造している「シマタニ昇龍工房」から誕生したブランドです。(りんとは、仏具の一つで、縁を棒で打ち鳴らして用いるものです。)
こちらの工房には、日本全国に10人に満たないりん職人が、なんと3人も所属しております。綺麗な音色を出すために、金鎚で叩いて板を絞り、丸みを整え、音を調律するという、究極の職人技でつくり出されています。
この「金鎚で叩く」技術を新しいものへ紡がれ誕生したのが、この「すずかみ」なのです。

 

 伝統の技術と素材の特性をクリエイティブな発想で掛け合わせると、このような素晴らしい商品が生まれるのですね。

「もの」を見る視点を学ばせて頂けた、素晴らしい商品との出会いに感謝であります。