バイヤー・ホーリーのええ物語り

バイヤーの仕事を通して、たくさんの素晴らしいものとの出会いがあります。その商品の持つデザインの由来や素材への拘り、生産地の背景にあるストーリーを独自の視点で伝えていきます。

日本の環境問題改善のため誕生した新たな木材、「結粋(ゆい)」

日本を代表する針葉樹、杉と檜。

現在では国土の森林面積の約3割を占め、日本の木材を代表する材種。しかし、これらの杉や檜が日本国内で有効活用されていないことにより起きている問題があります。その問題に取り組むべく誕生した木の素材、「結粋(ゆい)」を紹介いたします。

でもその前に、杉や檜がそこまで比率を占めるようになった理由に触れたいと思います。それは、戦後の拡大造林政策により急速に人工林が増えたことにあるようです。拡大造林政策とは、当時戦後の復興のため木材需要が急増しましたが、戦争中の乱伐による木材不足で価格高騰が進みました。このため、比較的成長の早く経済的価値の高い針葉樹(主にスギ、ヒノキ、カラマツ、アカマツなど)を人口的に造林し、木材の生産力を高めていく政策が取られました。

時代は流れ、昭和30年代に木材輸入の自由化が進み、国産材よりも安く大量ロットを安定的に供給できる外材へ需要がシフトしていきました。昭和30年代に9割以上あった木材の自給率も、今では2割まで落ち込んでいるようです。それにより、日本の林業は衰退し、後継者不足や山村問題、そして限界集落と呼ばれる問題が起こっています。また、現在日本の森林は十分な手入れがなされていないため、荒廃が進んでいます。その影響で、土砂災害を起こりやすくなったり、二酸化炭素を吸収効果の低下による温暖化防止の機能も下がるという環境問題もあるようです。

そうした問題を解決するため、くらしの中で ‘日本の木を使う’ ことに着目したのが、岐恵木工の吉田氏。岐阜県中津川市付知町にある木工所。

中津川市付知町は岐阜県南東部に位置し、きれいな水資源に囲まれた自然豊かな町です。この地方は寒暖の差が激しく、長い年月をかけ成長した年輪幅の少ない良質な長良スギ・東濃ヒノキなどが豊富に育つ環境です。

これまで地域資源である長良スギ・東濃ヒノキは主に住宅用構造材(柱、板材)として利用されてきましたが、小径木であるがため、薄板状にするとソリ・ネジレが出やすいという問題などからインテリア製品などへの利用は限られていたそうです。

また、住宅用構造材として利用できる木材も大きく制約され品質の悪い素材や、構造材に活用した端材などは利用されていない現状がありました。

一般的な小径木の接合板は、経年変化等によりソリ・ネジレ等が発生しやすかったものを、新たな製造技術開発により、ソリ・ネジレの少ない、これまでにない新しい表情を持つ接合板を開発しました。
この技術により針葉樹のインテリア製品等への新たな用途開発が可能になろ、誕生したのが「結粋」です。それではご覧ください。

 

レクタングル状のプレートとして、

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サークル状のプレートとして、 

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また、コースターとして、

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そして、箸置きなどして。木の温かみを活かし、デザインされた模様を楽しめます。

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では、実際にテーブルに使用するといかがでしょう。食卓に素敵な彩りを添えてくれますよね。

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出典:YUITABLEWEAR - 岐恵木工・吉田 木製インテリア製造販売

ピクニックやバーベキュー、運動会などの外の空気を感じながら食べる機会でも、割れる心配などもなく使えますし、一味違う雰囲気を楽しむシーンが想像できます。

 

この開発された技術は、特許も取得され、業界でも注目を浴びています。

これらの製品には、これまでインテリア製品にあまり使われていなかった国産の針葉樹が多くの日本人に見直され、流通し、しいては日本の林業の衰退をくい止め、森林保全環境保全に繋がることへの願いが込められています。

新たに技術開発されることが、これまでになかった価値を生み出すだけではなく、同時に起こっている問題を解決することへ繋げられていること。そうしたことを学んだ、素晴らしい商品との出会いでありました。